青シソとよく似ており、原産地の東南アジアでは品種群が多い。
必須脂肪酸で現代人に不足しがちなαーリノレン酸を豊富に含む健康油。えごまの種子の中には油分が45%あり、この種子から搾油された荏胡麻油を食べやすいように精製したものが「しそ油」と呼ばれている。精製された「しそ油」は、ほぼ無味無臭で口当たりはサラッとしている。
生産国:旧ソ連、アルゼンチン、カナダ等
あまに油は圧搾あるいは圧抽法によって得られる。油は特有の臭いを持ち、乾燥(酸化)性の強い不安定な油である。
沃素価175以上、鹸化価189~195、比重0.925~0.929、屈折率1.478~1.481、不鹸化物1.5%以下、凝固点-18~-27℃である。脂肪酸組成は主成分のリノレン酸40~61%、リノール酸15~25%、オレイン酸14~26%のほか、飽和脂肪酸を10%程度含む。
栽培地によって脂肪酸組成にかなりの差があるのは高度不飽和の油に特徴的なことであるが、いずれのあまに油もリノレン酸が最も多く、油は乾性油としてアルキッド樹脂塗料・ペイント・印刷インキ・番傘・油紙などに使われている。あまに油から得られる純度95%のリノレン酸は保護被膜、ゴムや合成樹脂の抗オゾン可塑剤、環状脂肪酸として融点の非常に低い(-40℃)潤滑剤、農業における昆虫誘引物質の製造などの広い用途が示唆されている。
生産国:メキシコ、ドミニカ、コロンビア、ペルー
アボガド(アボカド)果実から得られる液体油で、主として食用に用いられるが 一部の国では、化粧品のベースとして用いられている。
アボガドは熱帯アメリカ原産の亜熱帯性の常緑果樹で高さ15m以上になる。
果実は西洋梨形又は長楕円形か球状で、果肉は黄色で柔軟で甘い。そのまま食す他、パンに塗ったりサラダに 利用される。
パルミチン酸:4-16%、パルミトレイン酸:0.5-7.4%、ステアリン酸:0.1%、オレイン酸:64-94%、リノール酸:2.2-15.9%、リノレン酸:0-2%、イコセノイック酸:0-0.2%、ヨウ素価:65-110、鹸化価:180-200、不鹸化物:4.0以下
生産国:欧州
ぶどうの種子から圧抽法によって得られる乾性油である。国内ではJASが制定されているが取り扱い量は少ない。しかし近年のワイン健康ブームによってぶどう種子油の人気が向上してきた。
種核中の平均含油量は10%(7~21%)で、新鮮なぶどう種子から得られた油は食用に供され、一見、オリーブ油を思わせるが、組成はむしろ大豆油に似てリノール酸に富んでいる。比重0.917~0.923、屈折率1.473~1.477、鹸化価188~194、沃素価128~150、不鹸化物は1.5%以下である。脂肪酸組成は、パルミチン酸6~8%、ステアリン酸3~4%、オレイン酸18~20% 、リノール酸67~71%、リノレン酸0~1%である。不鹸化物の主成分はステアリンでエリトロジオールを含有するのが特徴である。
お茶の種子から得られる不乾性油である。オレイン酸含有量が多く、酸化しにくく、無味無臭のさらりとしたオイルである。
原産国:南米(ブラジル、ペルー、スリナム)、現在では世界的作物
落花生の実から圧搾法または圧抽法によって得られる不乾性油である。落花生油は品質が安定しており、芳香もあるので好まれる。
沃素価84~103、比重0.909~0.916、屈折率1.468~1.471、鹸化価188~196、不鹸化物1.5%以下、ロダン価67~73、水産基価2.5~9.5である。脂肪酸組成は、パルミチン酸10~12%、ステアリン酸2~5%、オレイン酸40~49%、リノール酸30~37%、リノレン酸0~2%、アラキジン酸1~2%、エイコセン酸0~2%、ベヘン酸0~4%、リグノセリン酸0~2%である。最近、落花生油の精製時に白土の代わりにアルミナで脱色すると保存性のよい油が得られるという研究や、落花生焙焼時の芳香原因物質の分離がなされている。
生産国:ロシア、ウクライナ、EU、アルゼンチン
ひまわり油はひまわりの種子から得られ、通常品は半乾性油である。そのまま又は採油に先立ち脱穀し、顆肉としたのちに圧抽採取される。原油は色が淡く、精製がきわめて容易で、精製損失は少ない。ごく少量であるがろう分を含み、これが濁りの原因になるので、脱ろうの必要がある。高リノール酸タイプと高オレイン酸タイプがあり、前者は沃素価120~142、鹸化価188~194、比重0.915~0.920、屈折率1.471~1.475、不鹸化物1.5%以下である。脂肪酸組成は、パルミチン酸3~8%、ステアリン酸2~5%、オレイン酸15~25%、リノール酸65~75%である。サラダ油や調理用油として好んで用いられるほか、水添してマーガリンやショートニングに用いられる。この油は白色塗料に用いた場合には黄変しないので、アルキッド樹脂のように改質して塗料にも使用される。
高オレイン酸タイプは。沃素価80~95、オレイン酸75~85%、リノール酸5~10%で、酸化安定性にすぐれている。
生産国:中国、ドイツ、カナダ、インド、フランス
なたね油は、圧抽または圧搾法によって採油され、脱酸・脱色・脱臭の通常の精製工程を経て食用とされる。脱臭しない油は特徴的なからし様の臭いがある。
在来種のなたね油は、健康上問題ありとされたエルカ酸を50%含んでいたが、エルカ酸を多量に含むのはアブラナ科の植物種子固有の性質であって、このために在来種なたね油は植物性油脂中で鹸化価が最も低かった。しかし、現在流通しているカナダ産を主とする輸入なたねは、品種改良の結果、エルカ酸含量は1%以下に止まっている。そのため脂肪酸組成も大幅に変化し、エルカ酸にかわって、オレイン酸が60%内外に増加し、特性値も大幅に変化している。
最近は従来以上に脂肪酸の組成を改善したなたね油も生産されるようになった。オレイン酸をさらに高めたハイオレイックタイプやリノレン酸を低減させた低リノレンタイプである。なたね油はサラダ油や加工用の油として、我が国で第1位の消費量を持つ。
生産国:アメリカ、中国
※アメリカの中部6州(ミネソタ、アイオワ、ミズリイ、イリノイ、インディアナ及びオハイオ)はコーン地帯として有名である。
胚芽(Germ)から圧抽法で得られる半乾性油である。
胚芽の分離はミールの製造に用いる場合は乾式法で、でんぷん製造の場合は湿式法で行われ、この胚芽の含油量は40~55%である。原油は甘みのある臭いがあり、色が非常に濃く、普通の植物油のように精製しても淡色になりにくい。この油は長鎖アルコールのエステルからなるろうを約0.05%含み、くもりを生じやすいので、精製工程で脱ろう処理を行なう。
用途はほとんどサラダ油として、マヨネーズやサラダドレッシング、天ぷら油などの食用に向けられる。
沃素価103~130、鹸化価187~195、水酸基価8~12、不鹸化物2.0%以下、屈折率1.470~1.474、比重0.915~0.921、タイター14~20℃である。脂肪酸組成は、パルミチン酸9~12%、ステアリン酸1~3%、オレイン酸25~33%、リノール酸50~60%、リノレン酸0~2%である。
不鹸化物の主成分はステリンで、γ-シトステリン、スチグマンステリン、飽和ステリン・ジヒドロシトステリンなどが検出される。リノール酸が多いにもかかわらず、安定性がよい。その他クリプトキサンチンを含み、淡黄色で特有の香味があるので,食用油として高く評価されている。用途は主として食用でその他硬化油原料にもなり、マーガリン原料として使用される。
生産国:中国、インド、パキスタン、アメリカ
主として圧抽法により採取される半乾性油である。綿の主産地はアメリカで、ロシア・中国、インド、中南アメリカ・東南アジア・アフリカの諸国でも産する。わが国で処理される製油原料は、主として米国から輸入していた が、最近はほとんど半精製油として輸入している。原油は有毒色素ゴシポールや遊離脂肪酸・リン脂質を多く含むため、大量のアルカリを用い脱酸するので他の植物性油脂にくらべて精製損失が多く、また淡色の油が得がたい。これらの問題を解決するため、最近ミセラ精製も一部で行われるようになった。
沃素価102~120、鹸化価190~197、屈折率1.470~1.472、比重0.916~0.922、不鹸化物1.5%以下、脂肪酸組成ミリスチン酸0~3%、パルミチン酸20~30%、パルミトオレイン酸0~2%、ステアリン酸1~3%、オレイン酸15~20%、リノール酸50~60%である。綿実油は風味がよく、酸化安定性も比較的よいので、主としてサラダ油、フライ油として使用されるが、この場合には脱ろうを行って固体脂を除去しなければならない。脱ろうで得られた固体脂は綿実ステアリンとよばれ、マーガリン・ショートニングの原料になる。